佐藤タイジ(ミュージシャン)

バンド仲間と過ごした80'S

田舎の中学で『白いレガッタ』をみんなで回し聴きしてきたよ

★ポリスが活動してた頃ってタイジくんは中学生?

「そうそう。四国の徳島県の田舎の中学で『白いレガッタ』をみんなで回し聴きしてたよ」

★あ、そうなんだ!?

「そうそう(笑)。ベーシストのやつがディープ・パープルをもってきて、オレがエアロスミスをもってきて、ドラムのやつがポリスをもってきて、さあ、どれをコピーするかって(笑)」

★へえー(笑)。

「結局バンマスがベーシストだったからディープ・パープルのコピーになったけど、『白いレガッタ』かっこよかったね。やっぱり“孤独のメッセージ”でしょ」

★それはバンドをはじめて組んだ頃?

「そう。中学2年だから1980年。『ゼニヤッタ・モンダッタ』がリリースされた年だった。ただオレさ、“孤独のメッセージ”はすげえ好きだったけど、当時“ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ”の日本語バージョンとかもあったじゃない? で、これはないんじゃないって思い(笑)、それでディープ・パープル(をコピーすること)になったんだよね」

★(笑)ちなみに最初にロック聴き始めたのって中学くらい?

「いや、お姉ちゃんがビートルズ狂だったのね。6つくらい離れてたから、結構オレは小学生からビートルズ聴いてて。それから映画『サタデー・ナイト・フィーバー』でディスコが流行るじゃん? で、姉ちゃんはアース・ウィンド&ファイアーとか、エレクトリック・ライト・オーケストラ(ELO)とか聴いてて、それで姉ちゃんの部屋でよくビートルズとディスコを聴いてたね」



最初はベースやりたかったんだよね。弦が少ないから(笑)


★その頃の徳島の環境ってどんなだったの?

「いや、チョー田舎だよ。夏は阿波踊りでみんな盛り上がるけど、ライブハウスなんか全然ないし、レコード店も小さいのがひとつ。自分たちのライブやるのも楽器屋さんの小ホールとか」

★でもバンド組みたかったんだ?

「実はオレは当時バスケット部のキャプテンをやっていて、ウチの学校って野球部がなくてソフトボール部があったんだけど、そこの仲良かったキャプテンがバンドやらないかってもちかけてくるわけ。藤本くんっていうんだけど(笑)。で、その言い出しっぺは話をもちかけてくる段階でもうベースを買ってたのね。オレはやるんだったらベースがいいなあって思ったんだけど、もうその藤本くんにベース買われちゃったから、じゃあギターかあって(笑)」

★え? 最初からギター弾きたかったんじゃないんだ?

「実は最初はベースやりたかったんだよね。弦が少ないから(笑)」

★そんな理由なの?(笑)。

「(笑)そうそう。で、お年玉とかでそこまでに貯まってた貯金でギターを買おうってなって。正月明けてからかなあ、5万円のエレキギターを買いに行くわけ、藤本くんと一緒に自転車で近所の楽器屋さんに。で、ギターを買ったら、おまけで(ギターの)ソフトケースか、小っちゃいアンプか、どっちかが貰えるわけ。家にアンプとか持ってなかったから、ちっちゃいアンプの方が実用的なんじゃないかっていうことで、そっちをもらって自転車で帰るんだけど、ギターは(ケースがないから)ダンボールのまんま背中に背負って身体に巻き付けて(笑)、アンプは前のカゴに入れて(笑)、藤本くんとふたりで自転車こいで帰るんだよね(笑)」

★ははははは!

「すげえ憶えてるな、その辺(笑)。で家帰ってきて、鳴らそうぜってなってジャーンとか鳴らすじゃん。そしたら親から『ちょっとタイちゃん! 大きいわよ!』とか言われて(笑)。『そっか、これで大きいって言われるのか』ってアンプを布団の中に入れてみたり(笑)」



オレの中ではU2の『焔』とポリスの『シンクロにシティー』、この2枚が80年代のいちばん好きなアルバムなんだよね



★80年代って音楽的にはニューウェイヴがあったり、テクノポップがあったりしたけど、その辺は?

「いや、YMOとかテクノポップはあんまり聴いてなかった。それより、U2の『焔 (The Unforgettable Fire) 』ってアルバムあるでしょ?あれがオレ、U2の中ではいちばん好きなんだよね。ブライアン・イーノがプロデュースしたやつ。たしかポリスの『シンクロニシティー』の1年くらい後にリリースされたと思うけど、オレの中ではこの2枚が80年代のいちばん好きなアルバムなんだよね」

★じゃあ高校生のときはいろんなロックに影響されつつ、プロのギタリスト目指して毎日練習してたんだ。

「うん。で、オレもう中学時代でけっこうギター上手かったのね。中学生仲間ではダントツだった。だから『あ、オレ、コレでいけるな』って思って(笑)。バスケットなんかよりも全然成績いい感じなの、音楽の方が。それで高校入った時点で、もう卒業したらプロになるんだって決めて、それからはそのために毎日練習って感じだったね」

★へえー。

「そしたらあるとき先輩のニューウェイヴ系バンドのギターが辞めたから弾いてくれって誘われて。そのバンドって地元では知名度あったのね、マザーノイズってバンドで、ポリスとXTCの間くらいのサウンドかな。それがオレもやり始めてからさらに地元で人気出だして、ちょうど大学進学の時期に合わせてそのバンドでみんなで上京しようってことになって、86年に上京するんだけど。じゃあ上京するのを機会にバンド名を変えようってことになって、シアターブルックになるわけ」

★え!?そのマザーノイズがシアターブルックになるの? 

「そうそうそうそう。そこからほんといろんなライヴハウスでやってた。でもその内リーダーが抜けてオレを中心にやりはじめて、それで新宿ロフトに初めて出たのが88年。1月6日。チケットまだ持ってるよ。だからシアターブルックは88年にロフトに初めて出演して、90年代に入ってアイデンティティを確立したって感じかな」



80年代って、音楽が自分にとって大事なものなんだっていうことに気づく時代、これで生きていこうって決めた時代かな


★じゃあ、タイジくんにとっては80年代ってどんな時代だったんだろう?

「そうだなあ、実はその当時は80年代に対しては『FUCK! 80年代!』みたいな感じだったわけ(笑)。なよなよピコピコしやがって!みたいな。FUCK! デュランデュラン!、FUCK!ニューロマンチックス!みたいな(笑)」

★それ、なんかわかる(笑)。

「ただ、自分の成長の過程でいうと、音楽が自分にとって大事なものなんだっていうことに気づく時代だよね。全般的にロックが好きだって気づくとき。で、これで生きていこうって決めた時代かな、いまにして思うと」

★実際その想いのまま、いまもやり続けてるわけだもんね。

「そうそう。ただ、だからってわけじゃないけどさ、いまの若いロックバンドの子とか見てると、なんか就職風味漂ってる感じするんだよね。バンドでメジャーと契約して、売れる曲書いてっていう、なんか就職っぽい感じ」

★たしかにインディーズも含めてやたら堅実になっちゃったよね。

「でも80年代って、このポリスの映画観ても感じるけど、もっとお気楽というか、まだシステムが出来上がってない時期だからか、あたらしいものがポコポコポコポコ出てくる時代だったやん?あとポリスがテレビに出て無茶苦茶やんちゃしてるのを観て、なんか胸がすっとした感じとかさ。ああいうパンク感っていまの日本のロックバンドにはないやん?それって、まずいんじゃないのかなって思うんだよね」

★すごくわかるね、その感覚。

「理由なき反逆じゃないけど、何が起こるかわからない胸騒ぎのするあの感じ、もっとぶっ飛んだ想像力とか妄想力が必要だと思うんだよね」




80’s お宝紹介

「これが14歳のときに初めて買ったエレキギター。ボロボロでもう音出ないと思うけど、弦も錆び錆びだけど、捨てられないんだよね、どうしても。結局19歳の頃までの5〜6年、これ一本をずっと弾いてて。やっぱりオレはレスポールが好きみたい」





インタビュー:井村純平(TOKIO DROME/WISDOM)




佐藤 泰司(Vocal&Gutar)
1967年1月26日、徳島県徳島市生まれ。

佐藤 泰司 96年にメジャーデビューしたロックバンド<シアターブルック>を圧倒的なカリスマ性で引っ張るバンドの顔。また2000年よりスタートしたJAM系ダンスミュージックを主体とした別ユニット<サンパウロ>としてもオルタナティヴな活動を展開。さらに今年はhitomi、松雪泰子、UA、SAKURA、Leyona、bird、Magnolia、COLDFEETといった女性ヴォーカルをフィーチャーしたユニット〈Taiji All Stars〉として初のフル・アルバム『FEMME FATALE』を07年2月21日にリリース。
 果たして、そのとどまるところを知らぬ活躍振りの源泉は、ロックと共に生きることを決意した80年代に隠されていた!佐藤泰司が語るリアル80'sストーリーです。

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